正直に言うと、最初にロケットナウを見たとき「これ、本当に大丈夫?」って思いました。
Uber Eatsや出前館に慣れていると、配送料とサービス料が取られるのが当たり前の感覚になってますよね。それが完全無料で、しかも月額会員になる必要もない。「どこかに罠があるんじゃないか」と疑いたくなるくらい。
でも使ってみると普通に届くし、本当に追加料金が発生しない。じゃあ一体どこから儲けているのか、ちょっと調べて考えてみました。
そもそもロケットナウってどんな会社?
まず運営会社から見ていくと、ロケットナウを作ったのは韓国のEC大手「クーパン(Coupang)」の日本法人です。
クーパンって聞いてもピンとこない人も多いと思うんですが、韓国では超メジャーな存在で、年間売上が約4〜5兆円規模(2024年度実績で約4.5兆円)。ニューヨーク証券取引所(NYSE)にも上場している大企業です。
韓国では「ロケット配送」という独自の物流網で翌日配送・即日配送を普及させて、Amazonに近いポジションを確立しています。その物流ノウハウと資金力を持ったクーパンが、今度は日本でフードデリバリー市場に殴り込んできたというわけです。
しかも一度撤退した経緯があります。以前クーパンは「クイックコマース(即配)」というサービス形態で日本に進出したんですが、そのときは撤退。それが今回「ロケットナウ」というブランドで再挑戦しています。二度目の参入なので、かなり本気度が高いと思っています。
サービス開始は2025年1月で、最初は港区という超狭いエリアだけでした。それがあっという間に23区全域、さらには全国各地の主要都市まで広がっています。このスピード感だけでも、生半可な戦略じゃないことが伝わってきますよね。
「無料」のカラクリ:ユーザーから取らず、お店から取る
ロケットナウがなぜ無料でやっていけるのか、結論から言うとユーザーから取らない分を飲食店(加盟店)側から取っているという構造です。
注文が入るたびに、飲食店がロケットナウに手数料を支払う仕組みになっています。この手数料率は公式には非公開ですが、業界内では注文金額の22〜35%程度と言われています。
「それってお店がかわいそうじゃない?」と思いますよね。でも飲食店目線で考えると、実はそう単純でもなくて。
Uber Eatsや出前館では、手数料を払うだけでなく「アプリの目立つ場所に掲載してもらうための広告費」も別途かかるケースがあります。競争の激しいエリアでは、手数料と広告費を合わせると売上の40%を超えることもあると言われています。
一方ロケットナウはサービス開始直後で、ロケットナウ自体がテレビCMやWeb広告を大量に打っています。お店側がわざわざ広告費を払わなくても自然と露出が増える状態なので、トータルの負担が結果的に安くなるケースもある、ということです。
| ロケットナウ | Uber Eats | 出前館 | |
|---|---|---|---|
| ユーザーの配送料 | 無料 | 200〜400円程度 | 200〜400円程度 |
| ユーザーのサービス料 | 無料 | 注文金額の10〜15% | 注文金額の10% |
| 加盟店の手数料 | 22〜35%程度(推定) | 約35% | 20〜35%(条件による) |
| 加盟店の広告費 | 現状は不要 | 別途かかるケースあり | 別途かかるケースあり |
実は今、赤字でやっている可能性が高い
ここが本質的な話なんですが、ロケットナウは今のところ「利益を出すこと」よりユーザーを増やすことを優先していると思います。短期的な赤字を覚悟してでも一気にユーザーを増やし、市場を押さえてから後で回収するというやり方です。
クーパンは韓国でも同じことをやっています。何年も赤字を垂れ流しながら物流インフラへの投資を続け、最終的に市場でトップに立ってから黒字化に成功しました。日本でも同じ道筋を描いているはずです。
親会社のクーパンが上場企業で資金力が十分にあるから、この戦略が取れるわけです。個人経営の店がやったら即倒産するようなことでも、巨大企業だからこそできる。
ユーザー視点で言うと、今がサービスとして一番お得な時期かもしれません。逆に言えば、今後どこかのタイミングで条件が変わる可能性もゼロではないということです。
PayPayがたどった道と同じじゃないか問題
「将来は有料化するんじゃないの?」という疑問は正直あります。
一番わかりやすい先例がPayPayです。PayPayは加盟店手数料を約3年間無料にして一気に普及させ、シェアを確保してから2021年10月に有料化へ転換しました。ロケットナウも同じ道をたどる可能性は十分考えられます。
ただ、有料化のシナリオにも段階があります。
まず来そうなのが「月額会員制の導入」です。「会員なら送料無料、非会員は有料」という形に移行するパターンですね。Uber OneやAmazon Primeがこのモデルです。完全無料がなくなるわけではなく、会員になれば今と同じように使えるという形になる可能性が高いです。
次に「飲食店側の手数料が段階的に上がっていく」パターンです。ユーザーは直接気づきにくいですが、お店の負担が増えると、結果として掲載店舗が減ったりサービスの質が下がる形で影響が出てくるかもしれません。
長期的には「アプリ内の広告で稼ぐ」方向も考えられます。後ほど詳しく書きますが、ユーザーが増えれば広告枠が価値を持ち始めるので、そこに移行していく可能性もあります。
どれが正解かはわかりませんが、「ずっとこのまま完全無料」というのはさすがに楽観的すぎると思っています。
配送コストはどうやって抑えているのか
「無料で配達して、配達員への報酬はどうするの?」という疑問もありますよね。ここも工夫があります。
一番大きいのが、短い距離だけ走るエリア設計です。ロケットナウは1件あたりの平均走行距離を2〜3km程度に抑えることを意識しているとされています。需要の高い都市部の特定エリアに加盟店とユーザーを集めることで実現しています。
近い距離だけ動けばいいので、配達員が1時間にこなせる件数が増えます。配達員は稼ぎやすくなり、運営側も1件あたりのコストを下げられる。うまくできているなと思います。
それから、急いでいない注文を複数まとめて一人の配達員が届ける仕組みもあります。「なんでこんなに時間かかるの?」と感じたことがある人は、これが理由かもしれません。
一方で「急いで届けてほしい」という人向けには、有料の優先配達オプション(約250円)も用意されています。基本は無料を維持しながら、急ぎたい人からは少し取るという設計です。これ地味に上手いなと思っています。
配達員の報酬も、時間帯によって変える仕組みを使っています。注文が少ない時間帯は抑えめに、混む時間帯には高めにすることで、必要なときだけ配達員を集められる。無駄な人件費が発生しにくい仕組みです。
将来の稼ぎ方:手数料以外にどこから取るのか
現時点では加盟店手数料が主な稼ぎですが、将来的にはそれ以外の方法も考えられています。
アプリ内の広告
ユーザーが増えれば、「検索結果の上に出したい」「おすすめ欄に載りたい」という飲食店や食品メーカーがお金を払うようになります。AmazonやGoogleがやっていることと同じ構造で、これが軌道に乗ると利幅がかなり大きい。ユーザーを必死に集めているのも、広告の価値を上げるためという側面があります。
月額の有料プラン
Uber OneやAmazon Primeのように、月額料金を払えば特典が得られる形です。「会員なら優先配達が無料」「毎月クーポンがもらえる」といった内容が想定できます。コアなユーザーが入ってくれれば、安定した稼ぎになります。
注文データの販売・活用
「このエリアで何時に何が売れるか」というデータは、飲食店にとって仕入れや営業時間の判断に役立ちます。こういったデータを分析レポートとして有料提供するビジネスもあり得ます。クーパンはデータ活用が得意な会社なので、この方向性はかなり現実的だと思っています。
飲食店はなぜ35%の手数料を払っても出店するのか
飲食店目線の話ももう少し掘り下げてみます。
35%って聞くと高く感じますよね。1,500円の注文が入ったら525円を手数料で取られる計算です。でもそれでも出店する飲食店が増えているのには理由があります。
さっきも触れましたが、他のサービスでは手数料に加えて広告費も別途かかるケースがあります。手数料の率が似ていても、広告費がかからない分ロケットナウの方が「手元に残るお金」が多くなるケースもあると言われています。
| 収支項目 | 他社 | ロケットナウ |
|---|---|---|
| 売上(客単価1,500円) | 1,500円 | 1,500円 |
| 加盟店手数料(35%) | △525円 | △525円 |
| 広告費(10%想定) | △150円 | 0円 |
| 手元に残る金額 | 825円 | 975円 |
あくまでシミュレーションですが、こうして並べると「35%取られても悪くない」と感じる飲食店の気持ちも少しわかります。
それに今はロケットナウ自体がテレビCMや大量のWeb広告を打っているので、お店が特に何もしなくても新しいお客さんが流れてくる。この「集客してもらえる」というメリットは、特に小規模なお店にとってかなり大きいんじゃないかと思います。
加盟店を増やすための営業の仕組み
ちょっと違う角度から見ると、ロケットナウは飲食店への営業に代理店を使っています。
飲食店を1件契約させるごとに、代理店に約4万円の報酬が支払われると言われています。これが相当なインセンティブになっていて、地域の営業力を持つ個人や企業が動いています。「飲食店にしつこく勧誘が来る」という声があるのは、これが理由の一つでもあります。
外部の人間を使って一気に加盟店を増やし、サービスの価値を早く上げるというやり方です。
まとめ:「無料」は戦略であって、ずっと続くかはわからない
ロケットナウの送料・手数料無料をまとめると、こういう構造になっています。
- 今の稼ぎ方:飲食店からの手数料(22〜35%程度)
- コストを抑える工夫:短距離エリア設計、注文のまとめ配達、時間帯別の報酬設定
- 赤字の穴埋め:親会社クーパンの資金力
- 将来の稼ぎ方:アプリ内広告、有料プラン、データ活用
ユーザーにとっては今が一番お得な時期であることは間違いないと思います。でも「永遠に完全無料」は少し楽観的で、PayPayの前例を考えると何らかの形で条件が変わる可能性はあります。
競合他社にとっても相当なプレッシャーになっているはずで、フードデリバリー業界全体の価格競争が激しくなっているのは確かです。ロケットナウが日本でどこまで広がるのか、しばらく注目していきたいと思っています。

